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マチェーテ

なぜ本邦では武力蜂起や革命が起きないかと申せば、やはり打倒すべき悪が明確ではないことが上げられましょう。本邦において悪の概念にもっとも近いのは、近視眼的な責任回避や生への倦怠から来る不作為に端を発した、善の不在なのです。じっさい近年、大局として求められる悪を積極的に行使するだれかはいませんでした。しかしながら、善の不在も長く続けば、それは悪へと変質する瞬間を持ちます。そのとき本邦に登場するマチェーテは、閾値を超えた連中の生き血に染まる、鉈(なた)という名前のセーラー服少女に間違いありません。彼女はあらゆる男性から理由なく好意を寄せられますが、行為に及ぼうとする者はすべて死にます。深夜アニメで制作された後、似ても似つかぬ新人アイドルで実写化され、封切り一ヶ月ほどでこのキャラクターには完全なる国民的忘却が与えられるでしょう。そして、その新人アイドルがアダルトビデオに出演するときに、ほんの少しだけ思い出されるでしょう。こうして、武力蜂起と革命の気概は若者の胸から、ごく小さな体積で莫大な吸収率を誇るサブカルという名のポリマーへことごとくに吸い取られ、結果、この世の悪は保持されるでしょう。諸君、これが文化の差と呼ばれるものだ。

キック・アス

らんらんらーらんららんらーらんらんらんらんらんららーらんらんらーらんららんらーらんらんらんらんらんららー。従来の魔法少女ものの文法を逆手に取ったのが貴様らの愛するアレならば、従来のアメコミヒーローものの文法を逆手に取ったのが俺様の愛するコレだ! ロリコンという罵倒ですら生ぬるい、刃物と銃火器を振り回しながら猥語を発する少女にしか欲情できぬ腐れオマンコ野郎どもには、お似合いの作品だわ! らんらんらーらんららんらーらんらんらんらんらんららーらんらんらーらんららんらーらんらんらんらんらんららー。

エクスペンダブルズ

「うわあ、つまらない! びっくりするほどつまらないよ! 特撮とかアニメとかでもそうだけど、オールスターが登場するお話になると、とたんつまらなくなるのはどうしてなんだろう! 教えて、聖母さま!」「(微笑んで)それはね、ケンジ君、優しさゆえなの。スター全員に、等分の尺で見せ場を作ろうとする製作側の配慮が、シナリオから緩急と起伏を奪ってしまうのよ」「うわあ、聖母さま、ありがとう! よくわかったよ! もうぼく、オールスターものはぜったい見ないことに決めたよ! ぜったいに!」

ドラゴンエイジ・オリジンズ

ぼくは、例えばファイナルファンタジーが、ぼくとともに成長してくれなかったことをどこかで恨みに思ってきた。本邦のおたく産業は、いずれ誰もがそこから離れることを前提とした若さと未熟さを輪廻する文化であり、大人になったぼくはいつまでも離れられないことを恥じてうつむきながら、それを再確認し続けてきた。じっさい、おたくだったぼくはずっと、たぶんつい最近まで、三十歳から先は無いもののように感じていた。なぜって、ぼくのいる場所では、どこにもそれは描かれていなかったから。けれど、世界との処し方において、人の成長はどこまでも続いていくことをやがて知る。確かに、荒い作りのゲームだ。システムの根幹に気がついてしまえば、いずれ変わらぬ一本道RPGには違いない。キャラ造形にしたって、いずれ同じトラウマ劇じゃないかと言われれば、全くその通りだ。でも、どのキャラも人くさく歪んでるのに、そのくせ、その歪みを誰かのせいにしないほど成熟している。そう、すべての成熟が、ついにぼくをうつむかせなかった。争いや信仰や愛憎や生殺は終わることがなく、世界の破滅という大きな題目を前にしてさえ、誰もがじぶんの小さな安寧を捨てられるわけじゃない。「グレイ・ウォーデンはその無私により、あらゆる種族から人間の存亡をかけた信頼を付託される」。無私の奉仕だけが救済を可能にするという揺るぎない事実。己の生命よりも長く続く何かに寄与できることの尊さ。失われたと思っていたあの系譜が、こうあって欲しいと願ったあの物語が、異国の地で接木され、生き延びているのをぼくは見た。この若い文化さえ成熟できるということ、そして、誰かの成長に寄り添う物語を生んだということに、ぼくは深い感謝を捧げたい。

ソウ・ザ・ファイナル

「血と肉の色はどの人種でも同じことを知るだろう」。ピンクってこと?

日の名残り

執事たちの沈黙! なんつって! 頭では名作であることを理解しながらも、裏腹に小生のまぶたは重くなり、未だこの枯淡に至らぬたくだくしい(おたく×2、の意)己が精神の健在を喜んだのだった。あと、昨今の翻訳に比しての邦題の凄みに、ゾッとした。

花のズボラ飯

うーん、ネタに密度感があってすごい楽しいんだけど、なんでだろう、ネットのライブカメラとか盗撮系のアダルトビデオを見てる気分になる。人間って、奥が深いなあ。

フローズン

「リア充爆発しろ!」…そんな言葉は使う必要がねーんだ。なぜなら、チャラ男や、ビッチどもは、その言葉を思い浮かべたときには! スキー場のリフトの上で実際に凍結しちまって、もうすでに終わってるからだッ! わかるか? オレの言ってる事…え? 「リア充凍結した!」なら、使ってもいいッ!

LET THE RIGHT ONE IN

叙情的で、静かなバンパイアもの。この題材を正しく成立させる要件はふたつある。まず、成熟の拒否とそれに伴う拒食の感じをメタファーとして折り込めるかどうかだ。本邦に氾濫する作品の多くは知らずか故意にか、この点を欠いてる。次に、世界から一方的に向けられる憎悪とそれに伴う孤独である。キリスト教というスキームが世界を体現している文化圏だからこそ、本作のタイトルにも暗示されているような、世界の本質である善からの拒絶の感じを深く表現できるのだ。本邦のバンパイアものが十代の時限的な孤独の表現へ留まるのに対して、欧米のそれがあらゆる人間の孤独を代弁するように思えるのは、ここに理由があると思う。あとさぁ、おれ、おたく業界のトレンドに明るいからさぁ、知ってるぜ、こういうのなんて言うか。ロリ婆、ってんだろ? いじめられる男の娘も出てくるし、おまえら、今日はもうたいへんな騒ぎになるな!

ゾンビランド

未視聴の向きにはうわごとに聞こえるに違いないが、「リトル・ミス・サンシャイン」と「28週後…」を足して2で割った作品。なにこの、ゾンビ映画とは思えない感動と、さわやかな読後感。しかしながら、成長してゆくアビゲイル・ブレスリンへ向ける小生のまなざしには、ある種の悲しみが含まれるのであった。

エグザム

この筋立て、英国で作れば低予算のB級映画になり、日本で作れば福本伸行の漫画になる。ただし、連載終了までに15年くらいかかる。

宇宙ショーへようこそ

インセプションばりに難解な世界設定を平易にし、ポチのキャラクター造形を少なくともドラえもんと同程度まで魅力的にし、主人公の五人については十年くらいのTVシリーズでその関係性を掘り下げ、幼女に対して執拗に性的な魅力を付加している感じを脱臭できれば、あるいは傑作と呼ばれる可能性さえあったのかもしれません。しかしながら現状、この世を占める大多数の人生にとってびっくりするほどどうでもいい作品です。アニメをサブからメインのカルチャーへ持ち上げようとする努力は理解するし、サマーウォーズ同様、技術的な面での優位性を否定はしません。でもね、こういうのをむやみと褒めず、ちゃんと映画的な視点で批評するほうが、きっとその目標をより早く達成できるんじゃないかなあ。

ザ・ロード

ヒーローのいない終末。いいか、誰に宣言する必要もないが、お前だけは覚えておけ。父性の本質とは暴力だ。それを濁らせるすべての繰り言は、グローバリズムと資本主義が生んだ欺瞞に過ぎない。しかしながら、物語はたとえ嘘でも作り手のその時点の結論を提示しなければならないと思うし、なんでもないようなことが幸せだったと思う。

ナイト&デイ

悪い意味で出る映画を選ばない二人ですが、負と負をかけ合わせると正になるのが算術です。性善説を処世の座右とするわたくしですから、いくばくかの期待を抱きながら視聴を開始しましたが、結論から申せば、想像をはるかに超えて最悪でした。映画を構成する要素はいくつかあって、ふつうそのいずれかの欠落が全体の評価を下げる要因であったりしますが、この映画はすべてが複合的に悪い方へ悪い方へと化学反応を行っていきます。圧巻です。わたくし、トム・クルーズの映画はミッションなんとかがタイトルにつかない限り二度と見ないことを心に誓いましたし、キャメロン・ディアスはジャック・ブラックかルーシー・リューと共演しない限り絶対に見ないことを神に誓いました。しかしながら、良いものばかりに触れていると良いものの良さへ不感症になりますので、クリエイティブを生業とする諸兄はむしろ他山の石として積極的に視聴するべきかもしれませんね。

告白

扱う題材が題材だけに、一般的な道徳や倫理の方向へ一瞬でもよれたら、全体が壊れてしまうだろうなと考えながら視聴を開始した。よれかかったと思えるシーンでさえ、次にひっくり返すための伏線となっており、結果、最後まで一糸も乱れなかった。いや、二箇所だけ乱れた。まず、現実のHIV患者へ向けた配慮の台詞、これは仕方がない。だが、後半の爆発シーン、てめーはダメだ。クソッ、クソッ、もっと真面目にCG作れよ! 松たか子の表情の方がより「地獄」を感じさせるって、恥ずかしくないのかよ! ともあれ、この作品がアカデミー賞を受賞して、普段は映画なんて見ない一般家庭のお茶の間を阿鼻叫喚の巷と変えることを想像するとき、私に浮かぶ微笑みは自然と優しいものとなるのです。え、もう落選決まったの? クソッ、クソッ、CGのせいだ!


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